考えるためのガイド

キャリアコンサルタントは、やめたほうがいい人もいます

ネットで「最悪の国家資格」と書かれているのを見て、手が止まっている方へ。調べたところ、言われている理由は3つとも事実でした。ごまかさずに並べたうえで、それでも取る価値がある人と、やめたほうがいい人を分けて書きます。

更新日: 2026年9月27日情報確認日: 2026年9月27日

批判されている3つの理由は、事実です

「キャリアコンサルタント 意味ない」「食えない」で検索すると、かなり強い言葉が出てきます。実際に、こういう理由が挙げられています。

  • 取得・維持のコストが高すぎる
  • 独占業務が存在しない
  • 求人があっても給料は安い

養成講習を受けている最中の身として、正直に書きます。3つとも、公的な情報で確認できる事実でした。否定できません。

ただ、事実であることと、「だから取る意味がない」は別の話です。この記事では、まず3つを正確に確認し、そのうえでどういう人なら価値が出て、どういう人だと出ないのかを分けます。数字はすべて出典をつけました。

①独占業務がない — 資格がなくても同じ仕事ができます

これがいちばん大きい事実です。キャリアコンサルタントは名称独占資格であって、業務独占資格ではありません。

禁止されていること
資格がない人が「キャリアコンサルタント」や、それに紛らわしい名称を名乗ること。違反すると30万円以下の罰金
禁止されていないこと
キャリア相談という仕事そのもの。資格がなくても、キャリア相談・面接練習・書類添削を行うことは法律上できます

出典: 厚生労働省「キャリアコンサルタント名称独占について」(確認日: 2026年9月27日)

医師や弁護士のように「資格がないとその仕事をしてはいけない」わけではない、ということです。資格を取っても、仕事が自動的に降ってくる仕組みにはなっていません。

逆に言えば、この資格が持っているのは「名乗れること」と「体系的に学んだという裏づけ」です。それが意味を持つ場面を自分で用意できるかどうかが、この資格の価値を決めます。

②お金がかかり続ける — 取って終わりではありません

「取得コストが高い」もそのとおりです。しかも一度きりではありません。

養成講習
約30〜45万円(150時間)
受験料
学科8,900円 + 実技29,900円
登録(初回)
17,000円(登録免許税9,000円 + 登録手数料8,000円)
5年ごとの更新
知識講習8時間以上 + 技能講習30時間以上。登録を続けるには、この更新が必要です

出典: 厚生労働省「キャリアコンサルタントとして活動している方へ」(確認日: 2026年9月27日)

初期費用は合計35〜50万円前後。そのうえ5年ごとに講習の費用と、38時間以上の時間がかかります。「一度取れば一生もの」の資格ではありません。

ただし初期費用については、多くの講座が給付金の対象です。条件を満たせば297,000円の講座が実質59,400円まで下がります。金額が理由で迷っているなら、判断する前にここを確認する価値はあります。

③年収の数字には、からくりがあります

ここは丁寧に書きます。ネット上には「キャリアコンサルタントの年収は400万円台」という数字が出回っていますが、この数字の読み方を間違えると判断を誤ります。

もとになっているのは、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2022年7〜8月に行い、7,586人が回答した調査です。そこでの個人年収の分布はこうなっています。

最も多い層
300万円〜400万円未満(16.5%)
2番目
400万円〜500万円未満(14.5%)
3番目
200万円〜300万円未満(13.8%)
中央値
400万円〜500万円未満

出典: 労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書No.227 第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」(確認日: 2026年9月27日)

ここが大事なところです。これは「キャリアコンサルタントとして稼いだ額」ではありません。その人の個人年収の総額です。

同じ調査で、正規雇用で働いている人ほど、キャリアコンサルティング活動による収入の割合は低いことが示されています。つまりこの400万円台の多くは、本業の会社員としての給料です。

言いかえると、この数字が表しているのは「資格を取れば400万円稼げる」ではなく、「この資格を持っている人の多くは、別に本業を持っている」ということです。

資格をめぐる批判の中で、この点がいちばん誤解されています。そしてこの資格でいくら稼げるかを示した公的な統計は、私が探した範囲では見つかりませんでした。「平均年収◯◯万円」と書いてあるページを見かけたら、それが何の数字なのかを確かめてください。

やめたほうがいい人

ここまでの3つを踏まえると、取らないほうがいい人がはっきりします。厳しいことを書きますが、35〜50万円と150時間を失ってから気づくより、いま気づいたほうがいいと思って書きます。

資格を取れば仕事が来ると思っている人
来ません。独占業務がないので、「資格があるから頼む」という理由が世の中に存在しません。仕事は自分で作る必要があります
これ一本で独立して食べていくつもりの人
いきなりは無理だと考えたほうが安全です。多くの人が本業を持ちながら活動しているのが実態です
いまの仕事が苦しくて、逃げ場を探している人
資格は逃げ場になりません。150時間の学習と5年ごとの更新という、新しい負担が増えるだけになります
「何か資格を取りたい」だけの人
コストが見合いません。費用も維持の手間も、他の資格よりかなり重いです

ひとことで言うと、この資格をどう使うかの計画がない人は、やめたほうがいいです。資格そのものには、仕事を運んでくる力がありません。運ぶのは計画のほうです。

それでも取る価値がある人

逆に、使う場所が先に決まっている人には、はっきり価値があります。名称独占という特徴が、そのまま武器になるからです。

いまの職場で使う人
管理職・人事・育成の担当者など。部下との面談や1on1に、体系立てた型が手に入ります。転職しなくても効果が出るので、投資の回収が早い
いまの仕事に足す人
研修講師、士業、教育、医療・福祉など「人と話す仕事」をしている人。既にある信頼に、国家資格という裏づけが乗ります
長く続けられる仕事を探している人
定年や年齢の上限に縛られにくい仕事です。経験を積んだ年数が不利にならない、数少ない領域です
公的機関・学校での支援を目指す人
ハローワークや大学のキャリアセンターなどでは、応募の条件や評価の対象になっていることがあります。ここは資格が直接効きます

共通しているのは、「資格を取ってから考える」ではなく「使う場所が先にある」ことです。順番が逆だと、同じ35万円でも結果が変わります。

私が、それでも取ろうと思った理由

ここまで厳しいことを書いてきたので、じゃあお前はなぜ取るのかという話もしておきます。私が養成講習に申し込んだ理由は、4つでした。

長く続けられる
年齢が上限にならない仕事だから。経験を重ねた年数が、不利ではなく強みになる領域は多くありません
場所を選ばない
オンラインでの相談が当たり前になり、どこに住んでいても続けられる形が見えてきたから
人の話を聞くのが好き
正確に言うと、人の価値観に触れるのが好きです。映画やドラマを見るより、目の前の相手の話を聞くほうが、本当に興味深い。この人は何を大切にして、ここまで来たんだろう——そこに触れたいなと感じます。どうしてこの人ができたのかを探すのが好きなんです
自分が救われたから
働き方に迷っていたとき、私自身がキャリアコンサルティングを受けました。答えをもらったわけではないのに、終わったあと、はっきり前向きな気持ちになっていました。あの時間に何が起きていたのかを知りたいと思ったのが、いちばん大きな理由です

4つ目が決め手でした。この資格には独占業務がなく、稼げる保証もありません。それでも、あの時間には確かに価値があったと、受けた側として知っています。だから学んでいます。

逆に言えば、この「使う場面の実感」がないまま申し込んでいたら、私も35万円を後悔していたと思います。あなたにとってのその実感が何なのか、申し込む前に一度、言葉にしてみてください。

30秒で:あなたは目指すべき?

ここまでの内容を、そのまま質問にしました。売るための診断ではありません。「やめたほうがいい」と出ることもあります。正直に答えてください。

Q1資格を取ったあと、どこで使うかは決まっていますか?
Q2この資格だけで独立して食べていくつもりですか?
Q3いまの仕事から離れたい気持ちが、いちばんの動機ですか?
Q4150時間の学習を、いまの生活のどこに入れるか見えていますか?
Q55年ごとの更新(38時間以上+費用)を続けていけそうですか?
Q6人の話を聞くことそのものに、興味がありますか?

回答 0 / 6

迷っているなら、次にやること

ここまで読んで「やめよう」と思えたなら、この記事は役に立ったはずです。35万円と150時間を使わずに済みました。

「それでも取りたい」と思えたなら、順番はこうです。

  1. 使う場所を決める — いまの職場か、いまの仕事に足すのか、公的機関か。ここが決まっていないなら、まだ申し込まないでください
  2. お金の実額を確認する — 給付金を使うと実質いくらになるか。条件に合わなければ全額自己負担です
  3. 続けられる形か確認する — 150時間を、いまの生活のどこに入れるのか。オンライン中心の講座や子育て中の学校選びも参考にどうぞ
  4. 学校を比べる — 養成学校の比較で、費用・日程・サポート内容を並べて見られます
  5. 説明会で直接聞く — ほとんどの学校が無料の説明会をしています。申し込むと決めていなくても参加できます。ここまでの疑問を、その場でぶつけるのがいちばん早いです

私自身も、いま養成講習を受けている途中です。この資格が誰の役に立つのかを、実際に確かめながら書いています。きれいごとではない部分も、分かったら書き足していきます。