コラム — モヤンの中の人の連載 #マインド

周りの目ではなく、自分の軸で進む — キャリア・アンカーで考える、キャリアの一歩

周りの正解に合わせようとすると、自分の進みたい道が分からなくなることがあります。シャインのキャリア・アンカーから、自分が仕事で手放したくないものを整理します。

更新日: 2026年7月28日

モヤン(黄色い帽子をかぶった雲。学び直し中の相棒) モヤン

キャリアコンサルタントの勉強は楽しいの。でも、資格を取ったあとに何をするのか聞かれると、急に自信がなくなるんだ。周りの人は、ちゃんと進みたい道が決まっているように見えるし……。

サニー先生(丸眼鏡のレモンイエローの太陽) サニー先生

周りの人の道は、よく見えるからね。でも、自分の道を決めるときに必要なのは、「みんながどこへ進んでいるか」よりも「自分は何を大切にしたいか」なんだよ。今日は、シャインのキャリア・アンカーを使って考えてみよう。

周りの正解を集めるほど、自分の答えが見えなくなる

「資格を取るなら、仕事にしなければ」「子どもがいるなら、安定した働き方を選んだほうがいい」。キャリアについて考えていると、たくさんの「こうしたほうがいい」が聞こえてきます。周りの意見や現実的な条件を知ることは大切です。けれど、そればかりを集めていると、いつの間にか自分の気持ちよりも「人からどう見えるか」を基準に選ぶようになります。

条件としては悪くないはずなのに、なぜか苦しい。正しい選択をしたはずなのに、心が前を向かない。そんなときは、能力が足りないのではなく、自分が大切にしたいものと選んだ道がずれている可能性があります。

キャリア・アンカーは「これだけは手放したくないもの」

組織心理学者のエドガー・シャインは、キャリアの選択に影響を与える、自分の能力・動機・価値観のまとまりを「キャリア・アンカー」と表しました。アンカーとは、船をつなぎとめる「いかり」のこと。仕事や環境が変わっても、自分のキャリアという船が大きく流されすぎないように支えるもの、と考えると分かりやすいかもしれません。

アンカーには、専門・職能別能力、全般管理能力、自律・独立、保障・安定、起業家的創造性、奉仕・社会貢献、純粋な挑戦、生活様式の8つがあります。これは、どれか一つの箱に自分を押し込めるためのものではありません。「私は何を失うと、働く意味を感じにくくなるのだろう」「条件を全部かなえられないとしたら、何を優先したいのだろう」——そう考えるための手がかりです。

自分の軸は、職業名とは限らない

「在宅で働きたい」という希望の奥には、「家族との時間を守りたい」「働く場所を自分で選びたい」といった価値観があるかもしれません。「キャリアコンサルタントとして働きたい」気持ちの奥には、「悩んでいる人の役に立ちたい」「誰かの一歩に関わりたい」という願いがあるかもしれません。職業名や働き方は、自分の願いをかなえるための「方法」です。その方法の奥にある、どうしても大切にしたいものが、自分の軸になります。

「何がしたいか」が分からないときは、「何が嫌だったか」を見る

自分の軸を聞かれても、すぐには答えられないことがあります。そんなときは、無理に「やりたいこと」を探さなくても大丈夫。これまでの仕事や生活で苦しかった場面を思い出してみます。自分で考える余地がなくて苦しかったのなら「自律・独立」を、努力しても専門性が身につかないことが苦しかったのなら「専門・職能別能力」を、家族との時間が崩れて苦しかったのなら「生活様式」を、大切にしているのかもしれません。

反対に、うれしかった経験も手がかりになります。誰かに感謝されたこと。難しいことを最後までやり切ったこと。自分で考えて、形にできたこと。心が大きく動いた出来事には、自分が大切にしている価値観が隠れています。

だから、「何の仕事をするか」を急いで決める前に、「何を大事にして働きたいか」から考えていいのです。同じ仕事を選んでも、大切にしたいものは人によって違います。周りの人と違う道になっても、それは遅れているのではなく、自分の船に合ったアンカーを確かめている途中なのです。

周りの人は、答えではなく「参考資料」

自分の軸で進むというと、「人の意見を聞かないこと」のように感じるかもしれません。でも、周りを無視する必要はありません。誰かの働き方を「いいな」と感じたら、同じ仕事を目指すのではなく、何をうらやましいと感じたのかを考えてみます。自由に働いていることか、専門家として頼られていることか、家族との時間を守れていることか。周りの人は、自分の進む方向を決める人ではなく、自分の価値観を見つけるための参考資料の一つです。

そして、軸が分かったからといって、すぐに転職したり仕事を始めたりする必要はありません。専門性を大切にしたいなら興味のある分野を30分だけ学ぶ。自律性を大切にしたいなら今日やることを一つだけ自分で決める。キャリアは、人生を一度で決める大きな選択ではなく、自分の軸を確かめながら、小さな選択を重ねていくものです。

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